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オリジナル/短編集/家族の肖像シリーズ 第2話 page3



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ぼくのそばでパパとお兄ちゃんがなにか始めたら、ぼくはすぐ自分の部屋に行くことにしてたんだけど、でも、このときは、ぼくの戦闘機がめちゃめちゃ強くて敵をばたばた倒してて、今まで遊んだことにないステージにもうちょっとで行けそうだったんだ。
だから、パパとお兄ちゃんを見ない振りしてゲームを続けちゃったんだ。
 だけどゲームを再開しても、後ろのソファの方からお兄ちゃんのにゃんこの声が聞こえてくるから気になっちゃって、いっぱい敵に撃たれちゃって最後の一機になっちゃった。
これでやられたらゲームは終わりになっちゃうから大事にしないといけないのに、すぐにやられてテレビからドーンバーンって音がして、ぼくの戦闘機が墜落しちゃった。
ゲームオーバーだぁ。
 あーあ、ってがっかりして、見ちゃだめなのに後ろを振り返ったら、ソファの上でパパがお兄ちゃんの躰の上にのしかかってお兄ちゃんの口をちゅうちゅう音をたてて吸ってたんだ。
お兄ちゃんはパパの背中にぎゅうっと手を巻き付けてた。
その手が力一杯シャツを掴んでるから、パパのシャツはしわしわになってる。
 お兄ちゃんのシャツはボタンが全部外れてて、おなかが見えてた。
ズボンのベルトも外れてソファの足のところに転がってた。ズボンもずれてお尻が半分出ていた。
パパの手が、ズボンの隙間から中にはいりこんで動いてるのが見えた。パパはお兄ちゃんのおちんちんをにぎってたんだ。
しゅ、しゅ、って音がきこえるみたいに手が動いて、お兄ちゃんのお尻がソファからすこしだけ浮き上がってはぺたんと落ちる。
まるで、パパの手がお兄ちゃんのからだを動かしてるみたいだった。
「ん、んんっ、ちゅむ、はぁ、あああぁぁ……、や…、めて……、もう離してぇ」
パパに甘えてるお兄ちゃんの顔は、汗でいっぱいだった。パパのベロが口をいっぱい舐めてたから、口の周りもぬちゃぬちゃして、よだれも垂れてる。
甘えん坊のお兄ちゃんを、こんなにじっとみたのは初めてだった。
 急に胸から、どきんどきんって大きな音がしてコントローラーを床に落としちゃった。
かたん、って音がした。
 パパがお兄ちゃんの上から起き上がってぼくを見た。
お兄ちゃんも、ちらっとぼくを見た。それからはーはーって息をいっぱいして真っ赤になった自分の顔を両手で隠しちゃった。
「雅矢、ゲームは終わりだ。部屋に戻っていなさい」
ってパパは片手をふいって振った。なんだかわんちゃんに、あっち行け!って言ってるみたいな感じで、ぼくはちょっとだけむっとしちゃった。
「…、ああ、それともここで見せるか? 見られてヤるのまんざらきらいでもないみたいだったからな」
って、今度はお兄ちゃんにむかって言いながら、顔を隠していた両手をはがしちゃった。
「いやだっ それは勘弁してっ」
お兄ちゃんが、必死にパパにお願いしてた。
「なんでも言うことききます、だから、もう雅矢の前でしないでっ」
お兄ちゃんはソファから起き上がってパパのからだにすがりついて何度も頭を下げて頼んでた。
お兄ちゃんはぼくに、パパに甘えるところ本当に見られたくないんだって思った。
ぼくはお兄ちゃんがかわいそうになって、これ以上お兄ちゃんを困らせるのは止めようって思って、
「ぼく、お部屋にいるから」
って言って、急いでリビングから出たんだ。



 お部屋に一人でいると、さみしくなる。
せっかくお義母さんやお兄ちゃんができて、おしごとで忙しいパパも早く家に帰ってくるようになって、夕ご飯もみんなで食べて、一緒にテレビ見たり今日おもしろかったこととか、いっぱいお話して。
すごく、楽しくて、うれしかったのに。
 お義母さんが入院してから、ぼくは一人でいる事がおおくなった。
パパとお兄ちゃんはどんどん仲良くして、二人だけでずっといっしょにいるのに、ぼくだけひとりなんだもん。
ぼくもパパに甘えたいよ、お兄ちゃんを抱っこするみたいに、ぼくも抱っこしてほしいもん。
前はお膝に抱っこしてくれたり、お風呂だっていっしょにはいったのに。
 ベッドに寝っ転がって読んでたマンガも、ちっともおもしろくなくて床の上にポイって放り投げて、天井をぼんやり見てたら、なんだかおしっこしたくなっちゃったんだ。
お部屋から出たくなかったけど、おもらしなんていやだったから、こっそりトイレに行った。

 トイレはリビングと玄関の間にある。おしっこした後、まだ二人がいるのかなってリビングの中を覗いてみた。
パパもお兄ちゃんもリビングには居なかった。
 ソファの周りに、さっきまで着てた二人分の洋服が脱ぎ散らかされてて、テーブルの上には、新しいパパのお酒の瓶がおいてあった。
お酒の瓶はふたもしてなくて、お酒の臭いがリビングのなかにぷーんとしてた。
瓶のそばに、紫色とピンク色がまだらになった粒が入った小瓶が転がってた。
 この瓶もふたがあいて、まだら色の粒々がテーブルのうえに散らばってた。
勝手に触ったらまたすごく怒られるから、何も触らずにリビングを出る。
二階に上がろうとしたとき、お風呂場からビチャン!バチャ!って大きな水音が聞こえてきた。


 パパとお兄ちゃんはお風呂に入ってたんだ。
ぼくも一緒にはいりたいな。でもぼくはダメってパパが言ってたから、一緒には入れないんだ。
……さみしいな。
って、お風呂場のドアの前で立ってると、バシャバシャって大きな水音がもう一回聞こえてきた。そして
――ああ! あーーっ…――
って、苦しそうなお兄ちゃんの声も聞こえた。
 お風呂に長く入ってると、ふらふらしてのぼせちゃう。ぼくが二階に上がってからもう一時間くらいたってた。いつからお風呂に入ってるんだろう?
きっとお兄ちゃんはお風呂でのぼせちゃったんだ。
パパはどうしてお兄ちゃんをお風呂から出してあげないの? かわいそうだよお兄ちゃん。
もしかしたらパパものぼせちゃったのかな? ぼくが助けてあげなくちゃ!
 ぼくは、お風呂場のドアを開けて脱衣所に入って、お古場のガラス扉をゆっくり押し開いたんだ。

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オリジナル/短編集/家族の肖像シリーズ 第2話 page3

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