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オリジナル/鏡像恋愛 裏切り


裏切り、なのだろうか。

草薙さんに抱き締められていても
どこかであの人のことを考えていることに気がつく。

草薙さんの唇を首筋や胸元に感じて躯を震わせていても激しく喰らいつく唇を思い浮かべ、草薙さんの指先が僕のものを優しくたかぶらせてくれるときも、荒々しく動くあの指の動きを思い浮かべている。

「なにを考えているの?」
草薙さんの優しく問いかける声。

たった今受け止めたばかりの欲望の余韻で上気した頬を草薙さんの胸元に押しあて、荒く息をついていた僕の髪の毛を彼は優しく撫でてくれていた。

なにを・・・・・なにを考えていたんだろう。

草薙さんの熱いモノを躰の中にうけとめて、
脈打つモノを感じていたとき。
僕は。


嫌悪と屈辱とにまみれた、時間のとまった空間。
躯にも心にも刻まれた汚れたキズ。
逃れられない、切り裂くような欲望を躯に受け止める瞬間。

愛なんて存在しない
どろどろとした情慾だけのセックス。
それを嬉々として受け止めている自分の姿。


僕をいたわるように愛してくれる草薙さんの腕の中で
僕は。


「なにも、なにも・・・・」
いつのまにか僕は草薙さんの目をマトモに見られないようになっている。
目をあわせると、すべてを見すかされてしまいそうで。
もしかしたら、もう草薙さんは気がついているかもしれない。
気がついていても何もいわずに、かわらず受け止めてくれているのかもしれない。

それを知ってしまうのがこわくて。

僕は躯をずらして、草薙さんの広い胸に唇をつけ、浅黒い肌に舌をはわせる。
さっきまで僕の中にいた彼の強ぶりに指をからめる。
草薙さんはなにもいわずに僕のするがままにまかせている。
ちらと目をあげ草薙さんの表情を盗み見る。
憐れんでいるようにも見える幽かな笑みが目もとに浮かんでいるのがわかる。

草薙さんが好き。


ひとりぼっちだった僕を受け入れてくれたのは彼だけだった。
人肌の暖かさも彼が教えてくれた。
彼の腕の中でならば安心していられる。

草薙さんが好き。

それはあのひとと出会ってからもかわらない。
だけど。


草薙さんの強ぶりを咽奥までくわえこみ舌で嘗めあげていく。
口元からだらしなくよだれがたれてくるのもかまわない。
これを、もう一度躯の中に感じたい。
僕の心の中の闇を消し去ってほしい。


草薙さんが好き。


口の中で草薙さんが大きくなっていく。

「くさなぎさん、好き・・・大好き・・・」

僕は自分の心を確かめるように言葉を口にする。


もう一度僕を貫いて。
僕の裏切りを消し去って・・・


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