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オリジナル/短編集/家族の肖像シリーズ 第1話  page2



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 パパが、お兄ちゃんのお尻を、片手で、ぱん、ぱん、て叩いて、

「はしたない声をあげるんじゃない」

って、すごく低い怖い声でお兄ちゃんに言ってた。

 お兄ちゃんは、パパの方を見て、

「ごめんなさい、ごめんなさい、拓矢たくや さんごめんなさい」

って、またにゃんこみたいな声で泣いてたんだ。

 いつもは、おとうさん、って、呼んでるのに、『拓矢』ってパパの名前を呼んでたんだ。

 


「お前がイヤらしい声をあげるから、雅矢まさやに聞かれてたぞ」

 パパがぼくの名前を言ったから、ぼくがのぞいてることが、ばれちゃったのかと思ってどきっとした。

「ごめんなさい、許して、あう、んくっ ゆ、許してくださあい…っ、あう 」

って、お兄ちゃんは一生懸命パパにあやまっていたけど、パパは、もっとお尻をぱんぱん叩いて、おなかをぐいぐい押しつけて、全然お兄ちゃんを許してあげないんだ。

「あーッあーぁッ いたい、たたかないでくださいッ  あうッ あああぁっ! 」

お兄ちゃんが、頭をベッドに押しつけて、大きな声を上げたから、パパはものすごく怒ったみたいだった。

「おおおっ うぉッ しめつけるなッ」

 パパは、お兄ちゃんのお尻を両手でつかんで、お兄ちゃんの背中にのしかかって、カミナリ様がごろごろ鳴ってるみたいな、ぼくが聞いたこともない低いうなり声を出してた。

お兄ちゃんは、ずっと

「ひーッひーぁッ ンアッ あ”あ”、ンひーぃっ!」

って、普段のお兄ちゃんから想像できない声を出して、ずっと泣いてた。

 ぼくは、もう、我慢できなくて、

「止めてよ、パパ、お兄ちゃんをいじめないで!」

って、大きな声で言って、お部屋に飛び込んだんだ。



「雅矢!」

 パパが、すごく驚いた顔でぼくを見て、それからすごくすごく怖い顔をした。

お兄ちゃんも、すごく驚いた顔でぼくを見てた。

お兄ちゃんの顔は、真っ赤になってて、涙でぐしょぐしょだった。

「なんでここに来た? 雅矢」

パパがお兄ちゃんの背中から躰を起こして、お兄ちゃんのお尻に手をおいた。

お兄ちゃんのお尻、真っ赤っかになってる。

「声がしたから」

ぼくは扉の側からすすめなくなってた。

「下でゲームをしてろと言っただろ」

「もう2時間遊んだもん」

「……ちッ ……ああ、決まりを守って本当に雅矢は良い子だ」

良い子ってほめてくれたけど、パパの目は全然にっこりしてないんだ。

約束守って2時間でゲームやめたのになんだか怒られてるみたいだった。

今日のパパ、変だ。いつものパパじゃないよ。



「雅矢……、今、パパはお兄ちゃんと大切な話をしてるから部屋に行きなさい」

 パパは、フーッフーッって大きな息をして怖い顔のまま、ぼくに言ったんだ。

「でも、お兄ちゃん泣いてるよ、パパ」

パパが怖かったけど、お兄ちゃんがかわいそうで、そう言ったんだ。

 パパは、お兄ちゃんのお尻を、ゆっくりなでながら、

「悲しくて、泣いてる訳じゃない、なぁ。そうだろう。ちゃんと弟に説明してあげなさい」

そう言って、おなかをぐいってお兄ちゃんのお尻に押しつけたんだ。

 そしたら、お兄ちゃんが、

「はひぃッ! あうぁッツ!」

って、おかしな声を出したから、ぼくはびっくりして、ベッドの側に寄って、お兄ちゃんの顔をのぞき込んだんだ。

 お兄ちゃんは、泣いてるような笑ってるような、変な顔をして、

「大丈夫、だいじょう……ぶ、はぁ、 しんぱいしなくて… ひぃッ あッ …平気ッだからッ!」

何度もつっかえながらぼくに話してくれた。

「ほんと? ほんとに大丈夫なの?」

「ぁ、ああんッ  うん、うん、 ほんとに大丈夫、だから、だからッ 出て行って!」

お兄ちゃんはそう言うと、顔を両手でふさいで、ぼくを見てくれなくなった。

「雅矢! 聞いただろう?! お兄さんは大丈夫だから、部屋に戻りなさい!」

パパがもう一度、大きな声を出した。

こんな怖い声で怒られたの初めてで、両足がガクガクってふるえて、涙も出てきて、ぼくは部屋の外に飛び出したんだ。


「朝まで、出てきたらだめだ、わかったな雅矢」

ドアをしめようとしたとき、パパの声が聞こえた。

ぼくは、もう一度、お兄ちゃんの部屋を振り返って見た。

 パパが、お兄ちゃんのお尻からからだを離して、もう一回すごい早さでくっついてた。

びたっ!って大きな音がした。

 パパのからだが、すごい早さでお兄ちゃんのお尻にぶつかって、びた!びた!びた!って、音が聞こえた。

「…! ひぃ! あ”!あ”!あ”! 雅…や…に、ばれッ  らめっ 拓矢さッ らめらぁ……!」 

お兄ちゃんの声が、その音に混ざって聞こえてきてきた。

「ま、だっ 子供だっ 意味なんてわかるものかっ 」

パパが、はぁはぁって息を吐きながら、お兄ちゃんのお尻のお肉をもみもみしてるのが見えた。

「雅矢に見られて感じたか、この淫乱がっ、…おウッ くぅっ またっ、く、締まるっ ん、う!」

「あ、あぅんっ! あああぁっあ……はっ、はぁっ! あ! あ”っあ”ああ”!」

パパの声とお兄ちゃんの声が今まで以上に大きくなって、びくっとしたぼくは慌てて、バタン!と大きな音をたててドアを閉めた。

ドアが閉まっても、お兄ちゃんの声が、部屋の外まで聞こえてた。

 


 にゃんこの声だ。


いつも真夜中に聞こえていたあの鳴き声が、ずっと聞こえてた。

 ベッドに潜り込んで、耳をふさいでも、お兄ちゃんの泣き声が聞こえてた。


ずっと、ずっと、朝までずっと、続いてた。




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オリジナル/短編集/家族の肖像シリーズ 第1話  page2


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